【おきたま漫遊録】~眠れぬ夜の琵琶~


夏っ!

と申せば花火と蚊取り線香、蚊帳に怪談!

古典的な季節感しか持ち合わせぬ上杉景勝が今宵の筆を執る。

予報によれば、ようやく今月25日くらいには、此処おきたまを含む南東北も梅雨明けしそうであるとの事。

いよいよ夏本番、暑さ到来じゃ!

日本の夏は短い、故にここぞとばかりに楽しまなければ「あっ」と言う間に過ぎてしまいますぞ。

海水浴にキャンプ、花火大会や夜祭やビアガーデン・・・

夏ならではの楽しみが山ほど待っておる!

皆様、存分に灼熱の季節を御堪能下され。

しかしながら、真夏の夜の寝苦しさは少々やっかいで御座るな。

斯様な夜には「怪談」など如何で御座ろうか?

日本古来、古くは平安末期頃から民話や伝説として始まり、歌舞伎や講談の演目としても語り継がれてきた日本の「怪談」。

昨今のオカルトやスプラッター系とは一味違った「怖さ」があり、身体の奥底からじわりじわりと凍りつく様に背筋が寒くなり、身の毛もよだつ程の「涼」が得られますぞ。

「日本三大怪談」といわれる「東海道四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹灯篭」は、人間の「業」「欲」「怨念」「悲哀」等を巧みに織り交ぜながら、生々しくも鮮やかに人の心の闇に巣食う「恐怖」を描き出し、古さを感じず、現代においてはむしろ怖さの質に新鮮さすら覚える傑作で御座る。

講談師は部屋の明かりを落とし、絶妙な語り口で話を進める。

その際に、演出として用いるのがゆらゆらと揺らめく蝋燭の灯。

これだけでも充分に雰囲気は盛り上がるのじゃが、更に臨場感を出し恐怖感を煽る為に、ある楽器を使う事も御座る。

それは何かと申せば

「琵琶」

琵琶の音が持つ独特の響きが、オドロオドロしさに一層の拍車を掛けるのじゃ。

琵琶と申せば【壇ノ浦の合戦】の悲劇をモチーフにした怪談、「耳なし芳一」が有名で御座るな。

琵琶法師が平家の亡霊に耳を引きちぎられると言う、なんとも痛恐ろしい物語。

しかし、琵琶と聞いて真っ先に某が思い浮かべるのは、

我が御父上であり上杉家初代当主

上杉謙信公

で御座います。

img_4謙信公は戦のみならず、「書」や「茶」、「馬術」「謡曲」などにも造詣が深く、中でも琵琶においては大変な名手で御座いました。

戦国期にも様々な楽器があり、笛や鼓などは武将も嗜む事はあり申したが、戦国武将、ましてや大将が自ら琵琶を奏でる事はとても珍しい事で御座います。

何故に謙信公が琵琶を嗜まれる事となったのかは、話せば長くなってしまいますので、何れまたの機会に書くことにさせて頂こう。

謙信公が春日山城で琵琶を奏でられると、その音は朝方に吹く強い風に乗って麓まで響き渡り、皆の耳に届いたので御座る。

この事から、謙信公が愛用された琵琶は【朝嵐】と銘されたので御座います。

001此れは謙信公に倣い、某が稽古に使用しておる琵琶に御座るが、

なんと!

およそ430年前に謙信公が愛用されていた【朝嵐】が現存しているので御座る!

051その【朝嵐】を直に御覧頂けるのがこちら、米沢市、上杉神社内に御座います

「稽照殿(けいしょうでん)」

こちら稽照殿は、歴史ある甲冑、刀剣、武具、絵画、仏書画、仏具、陶磁器、漆器、服飾、文書、など、131点あまりの重要文化財などを収蔵・展示しており、上杉謙信公や、某・上杉景勝、直江兼続、上杉鷹山公に関する物や遺品なども多数見る事が出来ます。

更に、稽照殿の建物自体も、米沢市出身の建築家・伊東忠太殿の設計によるもので、国の登録文化財になっております。

米沢を訪れて頂いた際には是非とも御覧いただきたい歴史施設で御座います。

けして後悔はさせませぬぞ!

 

それでは本日は是にて筆を置く。

撤収!

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【おきたま漫遊録】~眠れぬ夜の琵琶~ へのコメント

  1. あんみつ姫

    景勝様
    こんばんはヾ ^_^♪
    詰所でのおもてなし、有難うございました。
    景勝様の琵琶で怪談「耳なし芳一」を聞きとうございますね。
    それとも今までの出陣の武勇伝などお聞かせくださりますか。

    間もなく梅雨も明けて、灼熱の太陽が照りつける夏が来ましょう。
    お身体にはくれぐれもお気をつけてお過ごしくださりませ。
    またお会いする日を楽しみにしておりまする。(^<^)

  2. ゆうこ

    こんにちは、景勝様m(__)m

    夏は様々なことが目白押しでございますので、暑いからと行って外に出ないのは勿体無い。とは言え熱中症にも気を付けねばなりませんので加減が難しいですね。
    夏と言ったら怪談話………苦手でございます(汗)
    苦手と言うか無理ですね(泣)陰陽師絡みならば平気なのですが……。
    人間の奥底に住まう闇の世界。
    「業」「欲」「怨念」「悲哀」……平和な世の中では感じることが少ないかもしれませんが、これらの感情は生きている人間ならば誰もが持ち合わせているもの。その感情を表現しているからこそ怖さが増すのかもしれませんね。
    琵琶と言えば「平家物語」を語る上でも欠かせぬもの。
    平家の栄華と衰退を琵琶の音を響かせながら語ることにより更に平家の想いが伝わって参ります。
    謙信公が琵琶を嗜まれていたのは風情がありますね。琵琶の音は怖さだけでなく人の心を落ち着かせることも出来るので上杉家の静かな中での力強さを表現するには適した楽器かもしれませんね。
    謙信公が琵琶を嗜まれる事になった所以について是非とも知りたいです(^o^)
    稽照殿は米沢に行った際に必ず立ち寄る場所にございますが、一歩中に入っただけで心静まります。
    謙信公の琵琶からは力強さを感じますね。しばらく見入ってしまう程。また見に行きたいと思いまする。
    前回の失態を踏まえ、今回はこの辺りでコメントを締めたいと思います(>_<)
    では、これにてm(__)m

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